ポルトガルの北部の町、ブラガ在住の桐山シルバ佐知子です。
前回は、「なぜ私がポルトガルと出会い、仕事を始めるまでに至ったのか」について、お伝えしました。
今回は、「移住する際に大変だったこと」、「来てみてよかったこと」、「不便なこと」について綴ってみたいと思います。そして最後に、僭越ながら何かに挑戦をされたいと考えている方へのメッセージを送らせていただきます。
ポルトガルに移住する際に大変だったこと~ビザの取得~
これまでのコラムでもお話ししてきましたが、私はある日を境に移住をしたわけではなく、日本とポルトガルを何度も行ったり来たりしながら、徐々にポルトガルで過ごす時間が長くなり今日に至ります。そのため、ポルトガルの良いところ悪いところなど少しずつ見えてきていたので、あまり大変さは感じませんでしたが、強いて大変だったことを挙げるとするとビザ取得かもしれません。
◆観光ビザでスケジュールとにらめっこの日々
私は日本で法人を経営していて、お客様が日本ベースです。仕事を始めた当初は、ポルトガルでの滞在にはパスポートで入国できる通常の観光ビザ(約3ヵ月)を利用していました。おおよそ2年間はこの形で行き来していました。
ただ、シェンゲン協定において、この短期滞在は「あらゆる180日間における最長90日」と定義されていますので、6か月の内の3か月間しか滞在できません。そして、すでに30日間滞在している場合は、例え最初に入国した日から6か月過ぎた場合でも、あらたに3ヵ月が追加されるわけではなく、あくまでも1日ずつしか増えていきません。まるまる2週間滞在したい場合は6か月と2週間後にならないと入国できないのです。そのため、毎回渡航の前はシェンゲン協定の入国・滞在可能日数計算サイトを利用して、スケジュールとにらめっこをしていました。
この縛りとスケジュール調整が大変になってきたので、次にビジネスでのビザを申請しますが、私の業務の内容が長期滞在ビザ取得の理由にはならず、制限なく自由に入出国する目的はあまり果たされませんでした。
◆学生ビザで中期滞在を実現するも・・・
その後、ポルトガル語を現地で学習したいと思い、約10か月のコースに申込み、この時は学生ビザを取得しました。当時、今の夫と同棲をしていたのですが、午前中は毎日大学に通い、午後は仕事、夜は家事をする生活を送っていました。ただ、勉強と仕事と家事の両立は想像以上に大変で、中期滞在は出来ましたがどちらも中途半端になってしまいました。
◆手続きに時間が掛かった配偶者ビザ
そんな私を見かねてか、ポルトガル語コースの終了が近づいてきた時に夫からプロポーズをしてもらい、婚姻よる長期滞在ビザを取得することとなりました。ただ、この婚姻によるビザも準備する書類や手続きが多く、結婚を約束した後、ビザを取得したのは約1年後、婚姻関連の手続きが一通り終わったのは約2年後となりました。
ビザのことを常に考えていたわけではないので、ストレスを感じることはありませんでしたが、今振り返ってみると長い道のりだったなぁと思います。
ポルトガルに来てみてよかったと思うこと
会社員時代も長期休みが取れると必ずポルトガルを訪れていたほど、ポルトガルが好きでした。そして、長く住むようになってからも、改めてポルトガルの良さを感じ、来てよかったと常々思っています。
一番の理由は、ポルトガルの居心地の良さです。親切なポルトガル人からは人種差別をされることはなく、困っていれば誰かが手を差し伸べてくれます。ちょっとお節介なところがあったり、一生懸命に教えてくれたことが間違った情報だったりすることもありますが、これはご愛敬。また、あまり無理をしない国民性なので、私自身もいつも自然体でいることができます。
さらに気候の良さや食材の豊富さも、私の人生を豊かにしてくれていると思います。
ポルトガルに来て不便を感じたこと
田舎暮らしではありますが、生活していく上で不便を感じたことはほとんどありません。強いて言うと、ポルトガルでは手続きに色々と時間が掛かることです。
これはポルトガル人も感じているようですが、役所などに何か申請する場合や病院に行く場合、1時間以上待つことはそう珍しくありません。ポルトガル人の多くが、日本人より会話を大事にしています。初めて会った人とも長年の友人のように楽しく会話しているのを見ると、さすがだなぁーと感心させられるのですが、このおかげで時間通りに物事が進まないことが良くあります。
この日本とは違う時間の捉え方によって、不便だなと感じることはありますが、「郷に入っては郷に従え」です。1日の予定は、日本の3分の1にするよう心掛け、ストレスを感じないようにポルトガル人とのコミュニケーションを楽しむようにしています。

最後に~挑戦したいことがある方へ~
これまでコラムをお読みくださり、ありがとうございました。
5回に分けて、ポルトガルでの仕事や生活、ポルトガルと出会ったきっかけなどをお伝えしてきましたが、楽しんでもらえましたでしょうか。
私は日本で会社員として充実した毎日を送っていて、素晴らしい上司や仲間に恵まれてきました。その生活を離れ、全く異なる文化の中に入り、事業をしていくことは普通に考えれば大きなリスクです。でも、私は「もしリスクがないとしたら、生活していく上で十分なお金があるとしたら、私が本当にしたいことは何?」と自分に問うことにしています。それはどんな道を選んでも、リスクは何かしらあるからです。
世の中には「自分のやりたいことや挑戦したいことがわからない」と悩んでいる方がたくさんいます。その中で、もしあなたが既に「本当はあれがしたい、こんなことに挑戦したい」という気持ちを持っているのなら、まずは初めの一歩を踏み出してみることをおすすめします。失敗することはもちろんあります。失敗があるからこそ反省し考え、次に繋がる何かを得ることができます。でも、もし行動しなければ失敗することもありません。
ぜひリスクを恐れず、前に進んでみてください。きっと挑戦した先には、あなたの想像を越える経験が待っています。私もまだまだ多くのことに挑戦していくつもりです。年齢に関係なく、挑戦したい時に誰もが第一歩を踏み出せる、そんな世の中になったら素敵だと思います。
次回からは、昨年外務省に入省され、まさに新しいことに挑戦されている福田さんが担当してくれます。福田さん、どうぞよろしくお願いします!
◎ ポ ル ト ガ ル か る た 著 者 リ レ ー ◎
~桐山シルバ幸子さんから福田恵理さんへ~
Q. 既に1年程滞在されているとのことですが、ポルトでの生活で一番印象に残っていることはどんなことですか。またこれから訪れてみたいポルトガルの町があれば、教えて下さい。
■Memo:
新しく始まった「ポルトガルかるた」の最初の著者として、8月から5回に渡りコラムを担当してくださった桐山シルバさん。
Patioでのコラム連載はこれで最後になりますが、日本とポルトガルの架け橋になるという素敵な事業に今後も注目です!
桐山シルバさんの事業が気になる方は、初回コラムをご確認ください!
桐山シルバさん、毎回温かく背中を押される素敵なコラムをありがとうございました!
次回からは、外務省の在外研修でポルトガルのポルトに滞在中の福田恵理さんが担当してくださいます。
お楽しみに!