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ポルトガルと働くvol.1-フィリグラーナとの出会いと独立-

2021/09/09

ポルトガルの北部の町、ブラガ在住の桐山シルバ佐知子です。
前回は、私がポルトガルで何をしているのか簡単にご紹介しました。今回は、現在している仕事の中から、「フィリグラーナのオンラインショップ運営」について、少し詳しくお伝えしたいと思います。


数百年もの時を越えて受け継がれる、美しいフィリグラーナ


フィリグラーナ

2006年のクリスマスに初めてポルトガルを訪れ、ここで私はフィリグラーナに出会い、その美しさに魅了されました。

フィリグラーナは、とても細く糸状にした金や銀を使って、刺繍のような繊細で美しい模様を作り出す技術です。この技術は、紀元前3,000年頃のフェニキア人の金細工が起源と言われています。17世紀に入ると、その技術はポルトガルにも伝わります。ポルトガル北部で金が採れたことから、この辺りの貴族たちにより更に洗練され、美しいジュエリーとして完成していきました。

こうして発展していったポルトガルのフィリグラーナ。
最初は貴族を中心に愛用されていましたが、時が経つにつれて、一般のお家でも親しまれるようになります。特に北部の家々では、女の子が生まれるとお祝いに球状のフィリグラーナを贈る習慣もできるようになりました。女の子たちはこの球状のフィリグラーナがいくつか集まると、それを紐に通して大事に身に着けていました。まさに女の子のお守りとして愛されてきたのです。今でも、代々受け継がれてきたフィリグラーナをお披露目するお祭りが、北部の町ヴィアナ・ド・カステロで開催されています。


社会人留学後、改めてフィリグラーナに出会う


社会人4年目に第2都市ポルトへ社会人留学をしましたが、その際に憧れのフィリグラーナの工房を訪れ、改めて魅力に引き込まれました。帰国後も、とにかく色々な作品を見てみたい一心で、再びポルトガルを訪れては現地でお店や展示会を手当たり次第に見ていきました。

そんなことをしていた2015年。

想いを同じくするポルトガル人の女性、ナタリアに出会いました。
彼女が現地の工房をいくつも案内してくれましたが、この時に、フィリグラーナの技術を受け継ぐ職人がとても少なくなっているという現状を知りました。

17世紀にポルトガルに伝わり数百年もかけて発展した、まさにアートと言えるほどの美しいジュエリー。そんな素晴らしい技術が途絶えてしまうかもしれない。そうならないために、私に少しでもできることはないか。日本で知ってもらえれば、フィリグラーナを求める人が増えるかもしれない。そうすれば、海外でも求められている技術として、職人になり技術を受け継ぐ人がもっと増えるかもしれない。そうだ、フィリグラーナを日本に広めよう!

そんな想いが胸の奥から沸き上がった日のことを、今でもよく覚えています。


ブランドの立ち上げと直面した壁


「日本の女性は良いものを見る目があって、フィリグラーナの価値をわかってくれるし、大事にしてくれると思うの。私たちの出会いは絶対に運命。一緒にフィリグラーナだけを扱うブランドを作ろう!」

ナタリアは目を輝かせながら、私にこう話してくれました。その頃、私はまだ会社員をしていましたが、フィリグラーナの輸入販売をしようと決意。2016年3月、2人でポルトガル法人の登記をし、フィリグラーナ・コン・アモールを立ち上げました

ブランドを1から築き形にしていくのは、想像していた以上に大変でした。
まず、日本ではフィリグラーナというものが全く知られていません。またポルトガルという国に、フランスやイタリアのようなブランド力もありません。百貨店やジュエリーショップへ売り込みに行くものの、ブランド力がないことで、小売価格や卸価格に折り合いがつかず、なかなかうまくいきませんでした。

やはり、これからはD2C(Direct to Consumer)の時代。フィリグラーナの魅力をお客様に直接伝えることが一番大事だと考え、自社サイトとブログを開始。また、SNSでも発信をしていきました。まずは、自分自身の周りの友人などに知ってもらい、少しずつ知名度をあげていきました。

しかし、オンラインでの売り上げはなかなか伸びていきません。単価が1万円以上のアイテムがほとんどのため、オンライン購入ではなく実際に手に取って考えたいと話すお客様がほとんどでした。そのため、ポップアップショップを展開したり、ポルトガルイベントを開催したりすることで集客。私自身の周りから巻き込んで、口コミでお客様を獲得していきました。

こうしていくうちに、一度イベントなどでご購入してくださった方が、リピートでオンラインでも購入してくれるようになりました。毎月のようにポップアップやイベントに出店したり開催していたので、気が付くとポルトガルイベントをよくしている人という印象を持ってもらえるようになりました。


オンラインショップ中心での販売に


こうして紆余曲折しながらも、気が付けばオンラインショップ経由の売り上げが増えていきました。リピートのお客様のリクエストもあり、定期的に新作を発表したり、シーズンに合わせてプロモーションを行ったりして、オンラインショップでの仕掛け作りを心掛けるようになりました。

そんな中、コロナの影響でポップアップショップやイベントは全く開催できなくなり、さらにジュエリーを身に着ける機会が減ったためか、2020年~2021年は売り上げが減少しました。この経験は、オンラインショップ運営方法の改善を真剣に検討する良い機会となりました。2021年の5月にはサイトの大幅リニューアルを行い、商品やジュエリーについて発信し続けています。


好きなことから広がる仕事とライフスタイル


「フィリグラーナを日本へ輸入する」ことと真剣に向き合っていたら、たくさんの人に出会い、多くのご縁を頂くことになりました。

よく会社員を辞めることは怖くなかったのか、と聞かれることがあります。
20代と若かったこともありますが、本当に自信を持ってお勧めしたいものとの出会いが、独立への抵抗感を全く感じさせず背中を押してくれました。

まだまだ小さな事業ですが、一緒に働いてくれる仲間と共に、既存のお客様とのご縁を大事にしながら、少しずつ成長していきたいと思います。

■Memo:
ひとつひとつ手作業で作られたフィリグラーナ、美しいです・・・
出会いから独立に至るまで、桐山シルバさんのフィリグラーナへの強い想いがひしひしと伝わってきて、なんだか胸にグッと込み上げるものがありました。
ありがとうございました!

次回は、ポルトガルとビジネスを通して繋がる中で衝突した文化の違い、そしてもう1つのビジネスであるポルトガル語講座のお話も聞けるようです。
お楽しみに・・・!

◎フィリグラーナのオンラインショップ
フィリグラーナ・コン・アモール
こちらでフィリグラーナの製造工程も紹介されています。)

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