今回は、資産を買い換えた場合の圧縮記帳について話していきます。
圧縮記帳とは、例えば、土地を売って、その代金で新しい土地を買う場合に、譲渡益の一定金額を圧縮し、税金の課税を繰り延べる制度です。
例えば、以下の場合を例に見てみましょう。
土地の簿価 | 1,000万円 |
土地の売却額 | 1,500万円 |
譲渡費用 | 200万円 |
新しい土地の購入金額 | 1,200万円 |
【圧縮記帳をしない場合の土地の譲渡益】
1,500万円 -(1,000万円 + 200万円)= 300万円
法人税の税率を20%と仮定すると、300万円 × 20%= 60万円が税金。
新しい土地の簿価は、1,200万円となります。
【圧縮記帳をした場合の土地の譲渡益】
圧縮限度額 = 圧縮基礎取得価額 × 差益割合 × 80%
となります。
圧縮基礎取得価額とは、買換資産の取得価額と譲渡資産の譲渡対価の額のうちいずれか少ない金額をいいます。
今回は、1,200万円 < 1,500万円
従って、1,200万円 が圧縮基礎取得価額です。
差益割合 ={譲渡対価の額 -(譲渡資産の帳簿価額 + 譲渡経費の額)}÷ 譲渡対価の額
今回は、{1,500 -(1,000 + 200)}÷ 1,500 = 0.2
つまり、圧縮限度額は、1,200万円 × 0.2 × 80% = 192万円 となります。
1,500万円 -(1,000万円 + 200万円)= 300万円なので、
300万円 - 192万円 = 108万円が益となり、税金は、108万円 × 20%=21.6万円となります。
圧縮記帳をしない場合の税金60万円よりも低い結果となります。
新しい土地の簿価は、1,200万 - 192万 = 1,008万円となります。
圧縮記帳をした土地は、購入時の価額よりも低いので売却時に益が出た場合には、法人税が課税されます。これが、課税の繰り延べです。
資産を買い換えた場合の圧縮記帳の適用要件
では、資産を買い換えた場合の圧縮記帳の適用要件を簡便的に説明します。
特定の資産を譲渡(譲渡資産)し、一定期間内に特定の資産(買換資産)を取得して事業の用に供する場合には、特定資産の買換えの圧縮記帳の適用を受けることができる。
【譲渡資産の対象】
- 昭和45年4月1日から令和8年3月31日までの間に譲渡したものであること。
- 一定の買換えに応じて定められている譲渡資産として特定の地域にあることや、一定の取得時期に取得した等の要件を満たす土地等、建物、建物付属設備、構築物、船舶であること。(機械装置は該当しない)。
- 棚卸資産ではないこと。
- 土地収用法等により収用、買取り、換地処分、権利変換等により譲渡する資産でないこと。
- 贈与、交換、出資、現物分配、代位弁済により譲渡する資産でないこと。
【買換資産】
- 譲渡資産に応じて定められている土地等、建物、建物付属設備、構築物、船舶、機械装置であること。
- 原則として譲渡資産を譲渡した日を含む事業年度に取得した資産であること。なお、譲渡資産を譲渡した日を含む事業年度の前後1年以内に取得した資産を含む。
- 取得した日から1年以内に事業の用に供すること。
- 長期所有の土地等(所有期間が10年超の土地等、建物、建物付属設備、構築物)に係る措置について、買換えによって取得した資産が土地等である場合には、特定施設(事務所等の一定の施設)の敷地の用に供されるもので、その面積が300平方メートル以上であること。
- 買換えによって取得した資産が土地等である場合には、譲渡資産である土地等の面積の5倍以内の面積である部分であること。
資産を買い換えた場合の圧縮記帳を受ける場合には届出の提出が必要となりました。顧問税理士がいる場合には、土地等を売却や取得する前に相談をしてください。相談が遅れれば届出の提出期限が間に合わない場合があります。
令和6年10月現在の法令をもとに書いています。税制改正で内容が変わる場合もありますのでご注意ください。