以前、『今更聞けない?電子化とデジタルの違い』という記事でDXについてお話しました。今回は、少し違う角度から再度デジタル化についてご紹介します。
デジタル=タグ付けされた電子データ
これまで、様々なお客様にデジタル化について話してきた際に、「そもそも電子化との違いが分からない」というケースがほとんどでした。
電子化されたデータが手元にあるだけでは、デジタル化は不十分な状態です。
「デジタル化」とは、
- 電子化された上で
- 加工しやすい形となっているデータが
- 様々な用途で活用されている
状態のことを言います。
例えると、デジタル化は、電子データに「タグ付け」がされているということです。ここで「タグ付け」と表現している行為は、ケースによっては「関連付け」や「リレーション」などとも呼ばれます。
ハッシュタグは何のため?
SNSでは、「タグ付け」の事をハッシュタグと呼びます。同じSNSのつぶやきでも、ハッシュタグされたコンテンツはより検索されやすくなります。検索されやすくなると、より多くの人にアクセスされる確率も高まります。
この検索は、ユーザが意図的に行う検索だけでなく、SNSサービス企業のアルゴリズムによっても検索されます。これにより、ハッシュタグのあるテキストとないテキストでは、圧倒的にハッシュタグのあるテキストの方が検索されやすくなり、より多くの人の目に触れやすくなります。
これが、ハッシュタグの効果です。
「タグ付け」によって活用幅が広がる
このように、電子化されたコンテンツが「タグ付け」されていると、様々なコンテンツと紐付けされやすくなり、活用幅が広がります。
例えば、レシピのコンテンツはWebに数え切れないほどありますが、レシピとして「タグ付け」がされていないと、検索エンジンからはレシピとしては認識されず、他のWebコンテンツと同じように扱われます。
更に、この「タグ付け」にはGoogleなどが提示している推奨ルールがあり、そのルールを守っているとより活用されやすくなります。同じレシピデータを例に挙げると、食材やカロリーなどの栄養素も推奨される「タグ付け」の方法があります。その「タグ付け」を活用すると、そのレシピデータは、料理の手順を知るためだけのデータではなく、買い物リストに活用することや、カロリー計算などに活用することもできるようになります。
「タグ付け」されないと“ただの電子データ”
一方で、「タグ付け」されていない電子データは、ただのテキストデータでしかありません。
「タグ付け」されていないと、検索もしにくく、他のデータとの紐付けもできず、人が目で見て、脳で判断し、手動で一部分を抽出したり、再入力たりして初めて他の目的で活用することができます。「タグ付け」されていないとデータの再利用に手間が掛かってしまい、データ活用の幅も狭まってしまいます。
また、「タグ付け」も同じルールで利用されていないと関連付けが上手くいかなくなってしまいます。デジタル化する際にコンテンツで「タグ付け」すべきデータやルールを統一しておかず、コンテンツ作成時に無秩序に様々な「タグ付け」をしてしまうと、関連付けが上手くいかないケースが出てしまいます。
例えば、Excelに電子化されているデータでも、セルに「1000円」と文字として入力されているのと、セルには「1000」と数字で入力されていて、表示設定で「¥1,000」と表示されるようにしているのでは、活用のしやすさが全く異なります。
AIによる「タグ付け」
このように、一手間掛かるのが問題である「タグ付け」ですが、AIなどのアルゴリズムでタグ付けしてしまう方法があります。例えば、前述のレシピのコンテンツも、形態素解析などを活用して、どんな食材を利用しているかなどを検知できると、「タグ付け」されていないコンテンツを自動的に「タグ付け」することができます。
AIによる「タグ付け」の場合、「タグ付け」のルールが機械によって統一されているため、より活用漏れが少なくなる効果も期待できます。その一方で、AIによって「タグ付け」しきれないコンテンツは「タグ付け」から漏れてしまうため、AIも完璧ではない事はここに補足しておきます。

スポーツデータのデジタル化
スポーツの業界でもデジタル化の取り組みが進んでいます。
『バスケプラス』というサービスでは、マネージャーが入力した試合のデータを、コーチ向けには戦略立案のために活用すると同時に、保護者向けには自分の子供の活躍を知るためのデータとして共有することができます。このように、ひとつのデータを、異なる目的や異なるユーザ向けに活用できるのが、まさにデジタル化のメリットです。
デジタル活用を意識したデータ入力が重要
この「デジタル化のメリット」を最大化させるには、入力されるデータをどのように「タグ付け」するかが重要になります。様々なユーザが個別のルールで「タグ付け」してしまうと、データ活用は思うように進みません。AIを活用することよりも何よりも、データを入力する時点で、そのデータをどう活用するかを意識する事が重要になってきます。
つまり、デジタル化とは、IT部門やデータサイエンティストなどの一部のメンバーではなく、会社でデータを入力する全てのメンバーが意識して関与すべき取り組みなのです。
電子化止まりの兆候は?
もし、会社でなかなかデジタル化が進まない場合は、この「タグ付け」について意識されるといいでしょう。同じデータを再入力されているようであれば、デジタル化ではなく、“電子化止まり”かもしれません。
“電子化止まり”の兆候としては、以下のような状況が発生しているはずです。
- 同じオーダ情報を複数のシステムで管理しており、それぞれに個別で入力(二重入力)が必要。
- 会計のデータを経営層に報告するのに、データ加工で数日掛かる。
- データを調査する際に、いくつものシステムを見なければならず、数日の時間を要してしまう。
- 情報伝達がかなりの負担になっており、価値創造の業務に注力できていない。
- 案件や人が増えるほど、情報伝達などの間接業務が増えてしまう。
このような状況が見られるようであれば、一度、会社のデータ資産について整理をすることをお勧めします。