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食とものづくりの共通点とその課題に向き合うデジタル技術

2021/07/05

今回は、食とものづくりの共通点とその課題に向き合う取り組みについてご紹介します。

以前、「日常にも使えるデジタル化とその効果」でも、家庭料理で実践できるデジタル化についてご紹介させて頂きました。今回は、食について、より専門的な商品開発におけるものづくりとの共通点をご紹介させて頂きます。


家庭の食をものづくりに置き換えて考える


食には、ものづくりとの共通点が多いと考えています。

家庭における料理でも、

  • 献立は、生産計画
  • 買い物は、調達
  • 冷蔵庫の管理は、在庫管理
  • 調理のレシピは、作業手順書
  • 家族の反応は、顧客満足度
  • 後片付けは、工場での5S活動

    と、ものづくりに置き換えて考えることができます。

    家事の負担が女性に集中してしまうことも、ものづくりの課題でよく取り上げられる「属人化からの脱却」ができていないと言い換えることができます。


    家庭でもデジタルで属人化からの脱却


    調理の手順や必要な買い物データなどが、デジタル化され、家族で共有されれば、家庭における料理も属人化からの脱却ができるようになります。FamCookは、そんなコンセプトで開発し、Webレシピから献立や買い物リストを作成・シェアし、家族で料理を連携できるようにしました。

    西村家では、私が献立を立案し、買い物し、毎日の料理の下準備は妻がして、最後の仕上げは残業をしない方がやるという毎日で、「属人化からの脱却」を実現できています。今後は、下準備についても、冷凍食品や惣菜など、もっと外部サービスも活用していきたいと思っています。


    工場で求められる属人化からの脱却 ~工場の人材は変動する~


    この「属人化からの脱却」は、沢山のモノを作る工場でも重要視されています。

    工場では、作るモノの品質が高ければ高いほど、工場の価値が高まります。もちろん、工場で働く人達の技術レベルが高いからこそ、作るモノの品質が高まります。しかし、人の技術レベルによってだけでなく、「仕組み」で高い品質レベルを維持することが大切です。「仕組み」で高い品質が維持できれば、工場で働く人が変わったとしても、高い品質を維持することができるからです。

    大量生産の時代が終焉したことで、工場では、需要に合わせて仕事の量も変わるようになっています。仕事の量が変わるため、働く人にも一定の変動が生じてしまいます。その変動は、アルバイトなどの人材で吸収しますが、常に高い技術レベルの人材が集まるとは限りません。そのため、人材の技術レベルによって品質が左右されないように、誰が作っても同じ品質のアウトプットが出るように、作業を規格として定めることが重要になります。

    例えば、「ネジを締める」という作業でも、電動ドライバーを使い、更にトルク(強さ)を設定することで、誰がネジを締めても、ある程度同じ生産性と作業品質を達成することができます。


    商品開発における量産化の課題


    また、ものづくりでは、常に同じものを作る訳ではなく、新たな商品の開発も行います。

    商品開発では、プロトタイプを作り上げたあと、量産化に向けてものづくりの規格を定めていきます。この規格は、生産量に応じて、様々なパートナー工場と連携し合いながら製品をつくるために必要なものです。例えば、同じ「車」でも、モーターショーに展示するようなコンセプトカーと一般市場で販売している量産車では、製造の仕方が全く異なります。

    特に、創業したての「ものづくりスタートアップ」は、最初から潤沢な資金を有しているわけではないため、量産化は、自社工場ではなく、パートナーの工場で生産することが一般的です。量産化の条件が変わると、製造委託先も変わってしまう事など、抱える課題も多く、ものづくりスタートアップのハードルの高さとなっています。

    これらの課題に対して、一般社団法人「社会実装推進センター」では、ものづくりスタートアップが経験した課題やノウハウを積極的にシェアできる取り組みを進めています。


    食の商品開発とその課題


    参画しているプロジェクトを通して、食の商品開発においても、ものづくりの商品開発と同様の課題があることが分かってきました。

    例えば、飲食店の料理を商品化する際に、シェフのレシピがそのまま工業化できるわけでは有りません。飲食店の料理は、家庭料理と比較すると、複数のスタッフが連携し、より多くのメンバーで料理をするという違いがあります。一見工場の作業に近いようにも思えますが、工場と比較すると、それぞれの工程で重量を測る訳ではなく、ある程度の目分量で計ったり、最後の仕上げで味見をしながら調整したりするという違いもあります。

    食品工場では、さらに多くのスタッフが関わったり、機械を活用したりします。食材の重量もしっかり測り、加熱も、時間だけでなく、温度計で中心温度を計測するなど、より定量的に定義した規格に則って調理されます。また、この規格では、量産する量やどんな設備を使うかによっても、基準やプロセスが変わってきます。すると、元は同じレシピだったとしても、ものづくりの量産化と同じように、量産化の条件によって規格書の内容が変化してしまいます。

    また、食品工場では、作ったものが人の口に入るため、遵守すべき法律や取得すべき免許・許認可など、厳格なルールを遵守することが求められます。さらに、同じ料理でも、飲食店では作った料理をすぐ食べますが、食品工場で作られた食品は、すぐに食べられるわけではないため、賞味期限や消費期限、成分表示など、より厳格なルールを守らなければなりません

    こういった背景により、ものづくりの商品開発と同じように、様々なプロフェッショナルが関わることになるため、コストも時間も掛かるのが現状です。


    食の商品開発におけるデジタル技術の可能性


    そんな食の商品開発でも、デジタル技術を活用することによる効率化が実施されようとしています。

    私がCTOとして参画しているクオリアースでも取り組みを始め、先述の「社会実装推進センター」で公募したグローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業費補助金の対象に採択されました。(「飲食店の食品を電子システムを活用して冷凍加工食品化するソリューション事業」)

    この事業では、飲食店のレシピから作成した手順データをデジタル技術によって モノの流れに自動変換するソリューションを開発しました。これによって、どこの工程で作業を分割するかであったり、どこの工程を自動化するかであったりを検討しやすくする事で、商品開発の工数を削減することを狙っています。

    また、ただのテキストだった手順データが、視覚的なモノの流れになったことで、商品の製造プロセスが把握しやすくなりました。視覚化することで、これまでに商品開発経験の無いメンバーでも商品開発の検討内容が把握できるようになり、特定の人のみではなく、チームとして商品開発ができるようになりました。

    冷凍技術は、添加物を加えなくても保存期間を長期化できるため、フードロスにも貢献することが期待できます。冷凍食品をより美味しく、日常的なものにするため、デジタル技術を活用することで、冷凍食品の商品開発を効率化しようとしています。

    この取組によって、より家庭の食卓が手軽になり、笑顔を増やせるように挑戦しますので、本取り組みにご注目ください!

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