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デジタルサービスの品質について考える

2021/02/25

今回は、デジタルで求められるシステム品質についての考え方をご紹介します。


システムにおける品質の重要性


これまで、会計システムなどの基幹システムで求められる品質レベルは、非常に高いものでした。

特に、金銭の取引が行われるシステムにおいては、障害が発生すると業務が進まなくなるため、単独のシステムで障害が発生しても、バックアップが働いて、業務に支障の出ないようにする仕組みなどが施されています。当然ながら、このようなシステムで動くプログラムも、高品質なモノが求められます。開発時に不具合を入れないようにするのはもちろん、様々なテストによって品質を確保した上でリリースされます。(ただし、どれだけ品質の作り込みをしていても、実際に利用されているサービスでは、想定外のアクセスや処理が行われるため、障害は発生してしまいます。)

また、業務の実行だけでなく、その記録も大切です。正確な処理を実行させるだけでなく、その処理の内容や結果についても、漏れなく記録されるようになっています。例えば、トレーサビリティシステムにおいては、それぞれの製品がどのような環境で作られたかを全て記録する事で、製品に不具合があった場合、全ての工程のデータを遡れるようになっています。

このように、システムにおいて品質は非常に重要な指標で、高ければ高いほど評価されると認識されています。

では、デジタルでもこれまでと同じような品質が求められるでしょうか?
答えは、Yes。ですが、状況によって品質の軸が異なります。


紐付け精度80%のシステムの意義


これまで何度もご紹介している、生産現場の見える化システムですが、開発当初は、紐付け精度が80%にも満たないシステムでした。

元データがIDを持っていないため、特別なロジックで紐づける仕組みでシステムを構築したのですが、生産現場ではラインの途中で物を抜いたり、入れたりする事があることから、このロジックだけでは正確な紐付けができなかったことが原因です。

トレーサビリティシステムとしては使い物にならない精度でしたが、目的が生産性向上だった生産現場の見える化システムにおいては、紐付け精度が80%程度でも十分な価値を発揮する事ができました。


SoRとSoE/SoI、それぞれの役割


デジタル業界では、記録のためのシステムであるSoR(System of Record)が、従来からよく使われてきました。一方で、近年は、記録だけではなく、業務を推進(Engagement)する為のシステムであるSoE(System of Engagement)や、新たな知見(Insight)を得る為のシステムであるSoI(System of Insight)が注目されています。

生産現場の見える化は、まさしく新たな知見を得る為のSoIシステムでした。トレーサビリティシステムであれば、SoRとして、100%の紐付け精度が求められます。その一方で、生産性向上のヒントを得るための見える化システムであれば、SoIとして、100%の紐付け精度よりも、生産現場の課題をその日のうちに確認できることの方が重要です。

例えば、SoRとして、100%の紐付け精度を求めるために、その日の生産ラインで中抜きや中入れなどの個別対応の記録をインプットし、翌日に紐付け精度100%のアウトプットを提供することも可能です。しかし、「改善ポイントを見つけ出して生産性を向上させる」と言う目的下では、80%の紐付け精度でもその日のうちに課題を把握することの方が重要なのです。


品質との適切な距離感は、目的によって変わる


これまでシステムを開発してきた方や、運用してきた方には、どうしても「品質は高い方が良い」という価値観から、紐付けロジックなどのデータ処理精度が低いと、お金を払う価値がないと思ってしまいがちです。特に、会計システムなどといった記録するためのシステムに関わって来た場合は、正確性が最も重視されるのが当然のことであるため、価値観を変えるのは非常に困難な事です。

繰り返しになりますが、基幹システムは、どちらかと言うと会計業務の為に作られたシステムであるため、データに対する精度は非常に高いレベルが求められます。一方で、生産現場や営業活動などにおいては、意思決定や、具体的なアクションが求められるため、データの品質以上にスピードが求められる場面も多々あるということを念頭に置いておくことが大切です。


デジタルで求められる品質とは?


改めて、DXにおいて「品質」という言葉の意味を捉える場合、業務や経営が期待する事は何なのかを考え直す必要があります。既存システムと同じように、エラー発生率やデータの正確性などの価値基準で捉えてしまうと、サービス選定で判断を間違えるケースも多くなるでしょう。

また、ロジックやAIによる判断についても、不完全である場合は、その不完全な部分を人が補えば良いのです。例えば、ロジックやAIの判断が80%を超えると、これまで全て人が判断していた業務の80%は自動化できます。つまり、業務を1/5にまで減らすことができる可能性があるということです。残りの20%も、データが蓄積すれば、さらに自動化できる可能性も高まります。この場合は、どの判断をAIに任せ、その判断を人に任せるのかの判断が、サービスとしての作り込みの重要ポイントとなるでしょう。

今後、デジタルなどの新たな技術をビジネスに活用する際には、「品質」が、自分たちのビジネスや提供価値の向上とどのように関わっているのかを改めて考えることが求められています。


業務がデジタルで変わると、精度も変わる


さて、最後に、先程の紐付け精度80%のシステムがどのようになったのかをご紹介します。

先述の通り、紐付け精度が100%にならない原因は、生産現場で発生する、ラインの途中で物を抜いたり、入れたりするイレギュラーな作業があることでした。紐付け精度が80%でも、そのようなイレギュラーな作業が把握できるようになったことで、その作業への対策も講じられるようになり、結果的に紐付け制度が向上しました。

このように、業務にデジタルサービスを取り入れることで、生産性だけでなく、業務品質の向上にも効果が現れたのです。やはり、「見える」という事には大きな価値があるという事を改めて実感できた事例でした。

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