最近、新型コロナで様々なサービスがオンライン化され、デジタルサービスも非常に期待され始めています。
しかし、デジタルへの取り組みを始める際に、いきなりAIの導入を検討したり、高度なツールを採用したり、大規模なシステム開発に着手したりするのは、あまり良いやり方ではありません。特にデジタルの取り組みは、既存のシステム開発とは異なり、要件が具体的でない場合が多いのが実態です。そのため、デジタルの取り組みは、まずは小さく始めるのがおすすめです。
今回はこの小さな始め方について、具体的なツールなども交えて紹介させていただきます。
MVP(Minimum Viable Product)を作る
スタートアップでは、新たなサービスを作る時に、まず最初にMVPを作りましょうと言われています。
MVPとは、直訳すると「最も小さい、価値のある商品」の事です。
例えば、新たな移動手段として自動車を開発する場合、MVPとして最初に作るのは、タイヤではありません。これは、タイヤだけ開発できたとしても、タイヤだけではユーザーにとって価値のあるもの(Variable)ではないためです。同じ時間と労力をかけるなら、MVPとして、まずはユーザーが喜ぶスケードボードなど、効果は小さくても、ユーザーの移動手段を手助けする小さなものから開発しましょうという考え方です。そして、ユーザがスケボーでも喜ぶことで、方向性が間違っていないことを確認しながら、次にキックボード、自転車、そしてバイク…と徐々に価値の高い製品を開発していくのがMVPの考え方です。

(写真は、筆者が3年前にPlug&Playというシリコンバレーのアクセラレーター事務所で撮影したMVPの説明資料です。)
デジタルサービスでのMVPとは?
それでは、デジタルサービスにおけるMVPとは何でしょうか?
具体的な内容はそれぞれの企業によって異なりますが、一番重要なのは、売上に近い業務プロセスから取り組むことです。例えば、商談を獲得して、サービスを提供し、売り上げを計上するようなB2Bビジネスの場合は、この商談や案件を管理する業務プロセスから取り組むのがお勧めです。
おそらく、自分の会社であれば、売上を拡大するために社内の業務プロセスでどこがボトルネックになっているかは、なんとなく把握できていると思います。それは、ある会社にとっては経営者やキーマンのリソース不足であったり、別の会社にとっては幹部社員の決済であったり、はたまたオペレーターの処理であったりします。これらのボトルネックを解消するために、業務プロセスを定義し、分割し、定型化することで、ボトルネックがより具体的に把握できるようになります。なんとなく認識していたボトルネックが定量的に把握できれば、デジタル化に向けて着実な一歩を踏み出せたと言えるでしょう。
業務プロセスで判断基準などを定量的に定義することは、自動化につなげる事もできます。反対に、これらの業務内容がいつまで経っても属人的なプロセスで、暗黙知のままでは、いつまで経ってもデジタルへシフトする事はできません。
定量化できるかどうかでデジタルへの親和性が見えてくる
とはいえ、現行の業務プロセスを具体化しようとしても、定量的に定義できない領域もあります。定量的に定義できるかできないかは、デジタルへシフトできるかできないかの判断材料にもなります。定量的に定義できないプロセスは形式知化しにくい一方で、他社から模倣されにくい差別化要素かもしれません。(スケールできない可能性は高いですが…)
売上に近いプロセスが定量的に定義できれば、システム化し、メールなどの様々なサービスと自動連携させる自動化に取り組むこともできます。ここでも、いきなりAIやRPAなどを導入したり、エンジニアに依頼してシステムを開発したりするのではなく、既存のツールを活用してスモールスタートさせる手段もあります。
今回はデータ入力をより簡単にし、メールなどとの自動連携も可能な「AirTable」という、プログラミングが不要なノーコードツールをご紹介します。

ノーコードでスモールスタート
「AirTable」というサービスは、ノーコードと呼ばれているサービスの一つで、スモールスタートに適したツールです。
例えば、商談管理のデータをExcelのように表形式で管理しながら、各商談のステータスはカンバン形式でドラッグ&ドロップで変更させるような使いやすいUIに設定することも可能です。さらに、この商談ステージが変更したと同時に、その様子を関係者にメールやSlackで自動で通知することも可能です。商談状況の変化に応じて自動連携を活用することで、連絡の伝え漏れなどを防いだり、大事な予定は自動的にリマインド通知されるなどの仕組みも作ることができます。
ノーコードですので、小さく始め、自分でデータ構造を変更させながら、徐々に成長させていくことも可能です。(AirTableは、1,200件までのデータなら無料で使えます。) しばらく使ってみてから、気に入ったら有償化のプランを契約することもできますし、ある程度使うことで、独自で開発する際にもデータ項目や機能が明確であるようにさせることもできます。

ノーコードでもデータスキルは必要
ただし、ノーコードのサービスを使うからと言って、全くエンジニアの要素が要らないと言うわけではありません。アプリなどの機能のフロント系の開発スキルは不要ですが、データの設計や運用については、データ設計スキルが必要となります。(とはいえ、これらのスキルはデジタル時代において身につけておくべきスキルともいえるかもしれません。)また、単純にデータを作るだけでなく、どんなデータ項目があると、どんな活用ができるかも重要な視点となってきます。先述したように、売上に近いプロセスの判断基準が定量化できれば、自動化することも可能です。
このようなデータのスキルがあれば、スモールスタートを何度も繰り返し、社内プロセスのオペレーショナルエクセレンスが達成でき、よりビジネスを拡大させることができます。
弊社(株式会社Fam-Time)は製造現場だけでなく、複数社の社内プロセスでこう言ったデジタル化のスモールスタートも支援してきましたので、お気軽にご相談いただければと思います。