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#7 サッカー部門で働くスタッフの1年

2022/05/18

2022年も新年度を迎えてから約1ヶ月が経ちました。人によっては就職や入学など生活環境が一変し、期待と不安が入り乱れる時期を何とか駆け抜けてきたことでしょう。一方で、5月に入り新たな環境への慣れや疲労感、ゴールデンウィーク後の憂鬱など、不安定な感情を抱き始める時期に差し掛かっているのかもしれません。サッカー部門(=強化部)で働いている私はというと、すでに1年の約3分の1が終わってしまったタイミングです。

多くのサッカークラブでは、Jリーグの公式戦スケジュールに合わせて、「年間」という単位は2月に始まり翌1月に終わる期間を指します(この期間を「シーズン」と呼びます)。そうは言っても、チームの立ち上げはその前から始まるため、実態としては1月上旬からすでにシーズンが始まっているといっても過言ではありません。

通常、Jリーグの公式戦は12月に終了し、1月には早くも翌シーズンに向けた準備が始まります。そのため、12月~1月にかけての1ヶ月間はサッカー部門にとって最繁忙期であり、長期休暇を取る暇なく働いています。

今回のコラムでは、世の中の新年度開始のタイミングに合わせ(少し遅れましたが)、サッカー部門の1年間を紹介します。最大のポイントは、サッカー部門はその年に必要な仕事をしながらも、同時に翌年以降の「未来」を見据えた仕事を相当量している、ということでしょう。


1月~3月:新チームの立ち上げ期


2月のJリーグ新シーズン開幕に向けて1月からチームが始動します。この時期におけるサッカー部門にとっての最大の仕事は、新チームの立ち上げを裏で支えることです。

キャンプにも帯同しながらチームの状況を見守り、年末年始に行ったチーム編成がうまくいっているか否かを確かめます。Jリーグでは、およそ1月~3月までと7月~8月までの2度の所定期間において、選手の移籍・登録変更が可能となります。そのため、2月にリーグ公式戦が始まった後でも、新チームに不足する要素がないかを見極めて、3月末までに必要に応じた補強を行います。

ビジネス的な観点では、新チームの全選手・スタッフの方々との契約書の取りまとめや、サッカー協会及びJリーグへの登録、部門予算の年間計画、細かい業務だコラム#5コラム#6でご紹介したような成績予測に応じた変動給のシミュレーションなどを行い、新チームが法務的・経営的な観点からも準備ができている状態を作ります


4月~6月:新学期開始に合わせたスカウト活動のピーク


世の中の新学期が始まるにあたり、新大学4年生や新高校3年生の中からプロ選手の卵を発掘するスカウト活動がピークを迎えます。早い選手の場合、この頃にはもう来シーズンのプロ入りが内定してしまうこともあります。当然、リーグ戦を戦うチームの状況も引き続き見守りながら、7月~8月の選手登録期間に向けて補強候補のリストアップを行います。


7月~8月:チームのテコ入れ


これまで度々言及した通り、この期間は約1ヶ月間だけ選手の登録変更が可能となり、移籍が行われます。ヨーロッパを始めとする多くの海外リーグではこの時期に新シーズンが開幕するため、海外移籍もこのタイミングで発生することが多いです。サッカー部門は、海外移籍した選手の後釜となる選手や、リーグ前半戦を見た中での補強候補となる選手などと契約できるように動きます。リーグ戦は1年間と長いため、この折り返し地点におけるテコ入れの成否が最終成績を左右するといっても過言ではなく、極めて重要な分岐点となります。

なお、シーズン途中に補強をするかどうかは、チームの編成戦略や財政状況によります。

  • 移籍してしまった選手が残した移籍金+半期分の浮いた年俸で新選手と契約する
  • 選手が移籍して資金的な余裕ができたが、若手選手の成長に蓋をしないようあえて補強しない(=外部から契約する選手よりも内部にいる若手選手の方が可能性があると判断する)
  • 選手の移籍退団はないが、シーズン途中の補強を開幕前から計画しており、確保しておいたバッファで補強する
  • 補強したいがバッファがないため我慢する など

いずれにしても、ここでも重要なのは、必ず未来志向を持つことです。そのシーズンだけを考えてはいけません。下記のような論点を十分に検討した上で補強の決断をする必要があります。

  • 新たな選手との契約は当該シーズンの残り半年だけでよいか、翌シーズン分も契約すべきか
  • 新たな選手を獲得することで、既存選手の成長を阻害しないか など

9月~11月:ラストスパートと翌シーズンの編成開始


リーグ戦が佳境を迎えるタイミングですが、サッカー部門は翌シーズンの編成を具体的に考え始めないといけない時期です。会社内で翌シーズンの編成予算をある程度合意し、選手・スタッフ編成の骨子を検討し始めます。11月頃になると代理人経由で他クラブの選手動向に関する情報も入ってくるため、シーズン中のスカウト活動を通じてリストアップした候補を中心に、新戦力として声をかける選手に目星をつけ始めます

また、各クラブが翌シーズンの編成を具体的に検討し始める時期だからこそ、まだ進路が決まっていない大学生・高校生との契約や下部組織に所属する選手の昇格などが第2のピークを迎えます


12月~1月:新チームの編成


リーグ戦の終盤に、選手・スタッフの方々に翌シーズンの条件提示を行います。契約満了や移籍退団など、当該シーズンと100%同じ編成をすることは不可能なため、数名の選手・スタッフの皆さんの退団と、同時に同じ数だけの新加入が発生します。

基本的には、年内には8-9割方の選手・スタッフの皆さんと翌シーズン以降の契約に合意していただきます。一方で、年末年始にかけては、他クラブで起きた移籍を起因とする「玉突き」の形で数人の選手が動くこともあるため、その対応と補強を行います。前日まで契約可能だった選手が翌日には他クラブに決まってしまうケースは往々にしてあり、移籍市場では何よりもスピード感が重要です。

ちなみに、サッカー部門のスタッフも、業務委託契約であれば、基本的には2月~1月までの契約となっているため、この時期にクラブと契約更新あるいは満了に関する話し合いを行います。サッカー部門のスタッフとチームの選手・スタッフの人事時期が重なるため、サッカー部門のスタッフが交代になるとチーム編成は多忙を極めます

このような仕事を、ゼネラルマネージャー(GM)、強化部長やスポーツダイレクター、スカウト、ビジネス担当などが、各々の得意領域を分担しながら働いているのがスポーツ部門です。ご紹介したスケジュール感はあくまで一例でありチーム事情によって異なりますが、いずれにしても、サッカー部門は常にクラブとチームの「未来」を念頭に入れながら働いています。1年1年の結果にコミットするチーム、クラブ及びチームを中長期的にも見据えるスポーツ部門。視点が異なるからこそ時には意見がすり合わないこともありますが、反対に言えば、やはり強いクラブはおしなべて、短期・中長期の目線がクラブ全体で統一されていることは間違いありません

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