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#2 「ポルトガル→コンサル→サッカークラブ」。一貫していないようで実はしているキャリアパス

2021/11/30

前回触れた通り、私は高校時代に大学でポルトガル語を専攻する道を選び、大学時代には新卒で経営コンサルファームにて働く選択をしました。そして現在は、東京ヴェルディというプロサッカークラブで働いています。

一見すると、全く一貫性のないキャリアに映るかもしれません。しかし、自分の中では、将来目指す姿は高校時代から変わりません。その道のりに微調整はあったものの、ひとつの理想像を追い求めてキャリアの選択と決断を繰り返してきました。

その理想像とは「サッカーを通じて、一人のリーダーとして自らの手で、人々の熱狂や感動を生み出す」こと。高校時代にこのような趣旨の目標を設定し(当時はもっと解像度が低かったですが)、それを実現するためにベストだと判断した進路をその時々で選択してきました。今回は私がどのような目標や目的意識をもってキャリアを歩み今に至るのかについて、キャリアパスのいち参考事例としてご紹介させていただきます。


高校時代の決断:「ジョゼ・モウリーニョのようになる」ことを目指しポルトガル語を学ぶ道へ


高校時代には、都立高校の中では強豪の部類に入るサッカー部に入部しました。しかし、高校3年間をかけてもレギュラーを奪取できる現実的なイメージが湧きませんでした。そのため、将来を考えた結果として、部活動には早々に見切りをつけました。そして、特別な目的意識はなかったものの「最低でも大学は卒業しておこう」と大学進学の学費を稼ぐためにアルバイト漬けの高校生活を送り始めます。そんな中、ふと目にした以下の動画から、ジョゼ・モウリーニョというポルトガル人サッカー監督に興味を持ちました

いまでこそ監督の言動がメディアに取り上げられることは多いですが、当時はこれほど選手との距離が近くメディアを賑わす監督が少なかったこともあり、モウリーニョが私に与えたインパクトは多大なものでした。

将来の目標が、おぼろげながら定まったきっかけでした。当時は高校生だったこともあり物事を抽象化して捉える思考力はなく、ただ単純に「この監督のような人間になりたい」というだけの理想を描いていました。それでも、その背景にあった想いを大人になったいま振り返ると、「選手やファンが感情を爆発させ、スタジアムや街全体が歓喜の渦に飲み込まれる。この映像のようなサッカーの感動体験を、自分もモウリーニョと同じように作り出してみたい」…イメージとしてこのような想いがあったことを記憶しています。

ジョゼ・モウリーニョは、プロサッカー選手としては大成しませんでしたが、通訳兼コーチの形で指導者としてのキャリアを歩み始め、40歳という若さで母国ポルトガルの「FCポルト」を率いてヨーロッパチャンピオンにまで上り詰めます。「プロサッカー選手としては無名」「元通訳」(=語学勉強次第で自分にもなれそう)-そのような経歴にシンパシーを感じた当時の私は、「モウリーニョのようになるため、まずは通訳を目指そう 」という(いま振り返ると大変に浅はかな)考えのもと、大学でポルトガル語を専攻する決断をします。


大学時代の決断:「サッカークラブの経営に携わる」ことを目指し経営コンサルティングの世界へ


無事にポルトガル語学科のある大学に合格し、在学中は通訳を目指して語学勉強に励みました。その甲斐もあってか、3年次にはポルト大学に交換留学するチャンスを掴みました

ポルトガルは、ヨーロッパの中でも特にアカデミックなサッカー研究が進んでいる国です。現地では人との出会いにも恵まれ、今や日本でプロコーチとして活躍されている方と、サッカーを学問として大学で勉強するかたわらコーチとしても働く同い年のポルトガル人と3人でルームシェアをしていました。また、FCポルトの下部組織を率いるポルトガル人監督と、現地視察にいらしていた日本人プロコーチの方との対談を通訳する機会にも巡り合えました。

サッカーの本場であるポルトガルで、サッカーに関わる様々な職種の「一流」を間近で見た上で自らの理想像を見つめ直した時、自分のWill(やりたいこと)とCan(できること)は「サッカークラブの経営に携わること」であると、高校時代から抱いていた理想像をより具体化することができました。Willの観点では、地域に根差しファン・サポーターの熱狂を長期的に生み出し続ける基盤や仕組みを構築できるのは、通訳でもなく監督コーチでもなくクラブ経営者であること。Canの観点では、選手経験も大してなく監督コーチになるにもすでに出遅れている自分にとって、現実的に世界を相手に勝負できる舞台は、特殊技能職ではなくかつ現役寿命の長いビジネスマンであること。

したがって、将来はサッカークラブの経営に携わる、そのためにまずはビジネスや経営を学ぶこと。日本を離れポルトガルで異文化に触れながら自分自身を客観視することで空想と現実の仕分けをし、次に自分が進むべき道を軌道修正することができました。その意味で、ポルトガル留学は語学面のスキルアップだけでなく、キャリアの分岐点となる決断を下すきっかけにもなった重要な経験でした。


コンサル時代の決断:「スポーツマネジメントの専門性を身に着ける」ことを目指してサッカークラブの道へ


大学4年次の夏にポルトガルから帰国するとすぐに就職活動の準備を始めます。業界研究を重ねる中で(恥ずかしながら)初めて経営コンサルティングという職種があることを知りました。大学ではポルトガル語とそれに付随する地域研究ばかりを勉強してきたので、自分に足りない「経営」や「ビジネスマネジメント」のスキル・経験を若いうちから鍛えられる企業に就職したいと考えていました。経営コンサルなる仕事はまさに自分の思い描くネクストステップに合致していました。幸いにも、最初に力試しの意味合いも含めて受けた選考がスムーズに進みます。それが第1候補企業のひとつでもあったため、早々に内定を受諾しました。

新卒入社したコンサルファームでは、まずは現場リーダーであるシニアコンサルタントに昇格するまで転職しないよう心に決めていました。幸いにも、上流の戦略立案から中流の実行支援まで幅広いプロジェクトに携わり、また、念願だったスポーツビジネスにも参画することができ、ほぼ望み通りのキャリアを歩むことができました。だからこそ、辛い時期でも歯を食いしばり、キャリアの分岐点に設定していたシニアコンサルタントになるまで、ネガティブな理由から転職を考えることは一度もありませんでした

ただし、最初から希望通りのアサインが叶ったわけではありません。入社当初からメンターやアサイン責任者には「スポーツビジネスをやりたい」と主張し続けていました。しかし、社内にスポーツ案件が滅多になかったため、まずはアサインされた案件に全力を注ぎ、スポーツビジネスに関わる機会を待つ日々が続きます。そんな中で、私が金融ユニットに所属していた頃、メディアユニットにおいてブラジル市場調査に関する案件が受注されました。そして、ポルトガル語ができる若手を探しているとのことで、偶然にも1ヶ月間だけメディアユニットに貸し出されることになりました。自分の専門性を直接的に発揮できる仕事だったこともあり、幸いにもマネジャーの方々には評価してもらえました。それ以降は(金融ユニットには無理を言ってご迷惑をおかけしましたが)その方々が抱えるメディアユニットの案件に携わらせてもらい、広告代理店と新聞社の2つのスポーツビジネス案件を経験させてもらうに至ります。

このように、前職のコンサルファームでは同僚や上司にも恵まれ、ビジネススキルについても着実に自信を深めていました。そのタイミングで、一つの区切りとかねてより想定していたシニアコンサルタントに昇格します

シニアコンサルタントランクになると、否が応でも自身の専門性と向き合うことになります。コンサルタントランクまでは先輩や上司に与えられた仕事に対して120%向き合えば、概ね評価されます。一方で、シニアコンサルタントになると、プロジェクトのゴール仮説の設計、示唆の抽出、クライアントとのコミュニケーション、ミーティングのリード、組織マネジメントやメンバーのモチベーションコントロールなど、よりマネジャーとしての働き方が求められます。個人的にも、クライアントから「デロイトのプロジェクトメンバーの一人」ではなく「デロイトの齋藤」という人間を直接的に評価してもらうために提供できる強みや専売特許は何なのかをより一層突き詰めなくてはならない真っただ中にいました。

自らの専売特許をスポーツマネジメントにすることを決意してコンサルファームに入社したこともあり、コンサルタントとして一定の自信が付いてきていたそのタイミングで、スポーツ業界への転職を意識し始めました。ただし、コンサルタントとしてさらに経験を積めば、マネジャーやその先のパートナーを見据えて新たな視界が拓けることも認識していましたし、何よりも同僚や上司にも恵まれてたので、「良い話があれば転職しよう」という程度の心構えでした。一度外の世界を知るためにも、転職エージェントと会ったり、スポーツビジネス関連求人の話を聞きに行ったりと、アンテナを張り巡らす作業を始めたところ、偶然にもコンサル出身者でポルトガル語ができる人材がいるとの情報が東京ヴェルディ強化部の採用責任者(当時)の耳に入りますそして、コラム#1でご紹介したような東京ヴェルディ側のニーズと私自身のチャレンジの思惑が合致したことで、現在の仕事に就くに至りました。


キャリアの目標を叶えるために重要な3つのポイント


…長々とキャリアパスをご紹介してきましたが、結論としてお伝えしたいことは、上記のような経験から私がキャリア上の目標を叶えるために重要だと考えることは下記の3つである、ということです。

  1. 現状仮説でも構わないから、まずは目指す理想像を設定すること
  2. その時々で自分が最良だと信じる道を迷わず進むこと
  3. 人とのネットワークを広げるために行動すること

私も「サッカーの熱狂や感動を自らの手で生み出すこと」をキャリアの理想像に設定したことで、それを軸に各ライフステージにおいて「いま自分が進むべき道はどれなのか」を考え、決断を下すことができました。コンサルの世界で新人に叩き込まれる「仮説思考」と同様に、まずはゴールを設定すること、もしゴールが見当たらないのであれば、その時点で最も確からしい自分なりの目標を仮のゴールに設定すること。それが重要です。そうすることで初めて、設定した目標が本当に自分にとっての理想なのか、または、全く違う分野に理想があるのかを実感できるものです。全く異なる方向に理想があることが明確になったのであれば、その道を目指して歩み直せばよいのです。

次に、ゴールを設定したら自分の頭の中で思い付くいくつかの道筋の中から最良だと判断したコースを、ゴールまで最短なのかどうかにはこだわらずに進んでみることが重要です。私も、まずは高校時代に憧れたモウリーニョのようになるために「ポルトガル語を学ぶ道」に進み、「サッカー通訳の道」を歩んでいる途中に枝分かれた「サッカークラブの経営に携わる道」を発見し、そのための「経営コンサルの道」に進みました。就活を始めるまで経営コンサルティングという職種すら知らなかった私が、上記のようなキャリアを歩むことができたのも、ひとつの理想像を追い求めながら不足するスキルや経験をイメージし、方向性を微調整しながら理想に近づくと信じて進んできたからだと考えています。

ゴールへの最短ルートは誰にも分かりません。VUCAと呼ばれて久しい現代においては、全く無関係と思われたルートですら突如として最短ルートになり得ます。だからこそ、一見まわり道のように映るルートだったとしても、本筋とは異なるキャリアの「掛け算係数」を習得することで、目標への選択肢が広がること、または、最短ルートが拓けることもあるはずです。例えば、私もポルトガル語を学ぶ選択をしていなかったら、コンサルファームでスポーツビジネスに関われる機会も、東京ヴェルディから必要とされる機会もなかったかもしれません。教育家の藤原和博氏による有名な「100人に1人のキャリアを3つ掛け算して100万分の1の人材になる」キャリア論のように、まわり道をすることで逆説的に自身の存在価値が高まることもあると考えます。

そして最後は、やはり行動すること。個人的には、「幸運やチャンスを手にすること」とは、イコール「総量×遭遇率×獲得率」の確率論だと認識しています。幸運とは至る所に転がっており、その「総量」は誰に対しても平等です。一方で、「遭遇率」、すなわち幸運の種が自らのもとに訪れる確率は、「他者とのネットワークの広さ」と「自らが主体的にアクションを起こした回数」によって変動するものだと考えています。私の場合、ポルトガル人ルームメイトとの出会いも東京ヴェルディとの出会いも、決心をもって行動したことで偶然にも舞い込んできたチャンスでした。(ちなみに「獲得率」とは、その運を手中に収められる確率。いつ機会が巡ってきても良いように準備されていること、そしてそのために成長を止めないことが重要です。)

例えば、コンサルタントという職業も、特に若手のうちは「希望通りのプロジェクトにアサインされない」と腐ってしまいがち。最悪の場合、辞めてしまうケースも往々にしてあります。しかし、そのアサイン先での仕事を自身の専門であると胸を張って言えるほどに愚直に取り組むことで、希望する道へのチャンスが転がってくることもありますし、そこでの経験やスキルが理想のキャリアにおいて役立つこともあります。その事実はここまでご紹介してきた自分自身のキャリアを振り返っても、自信をもって断言できます。

ぜひとも上記3つのTIPSを頭の片隅に置いていただき、読者の皆様のキャリア設計のご参考にしていただければ大変光栄です。

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