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#1 なぜ元コンサルが”サッカー部門”に?

2021/10/26

私は現在、東京ヴェルディというプロサッカークラブの「強化部」で働いています。前職は、グローバルに拠点を構える経営コンサルティングファームの日本オフィスで、主にメディア業界における事業戦略立案~実行支援に携わらせてもらっていました。

「強化部」とは、一言で説明すると、プロサッカー選手、監督・コーチ、メディカルスタッフ、マネジャーなどから成る「サッカーチーム」を編成し、彼らが約1年間に及ぶ長いシーズンを戦い抜けるようマネジメントする部門です。クラブによってその呼称は異なり、「サッカー部門」「フットボール部門」「チーム統括部門」などと呼ぶクラブもありますが、弊社はその他多くのクラブと同様に「強化部」という名称を採用しています。「強化」=チームを強くする、との由来であると理解しています。

競技としてのサッカーの専門家集団であるチームを編成・マネジメントする部門であるため、この部門のスタッフは一般的に、元プロ選手や監督・コーチ経験の豊富な方が務めるケースが大多数です。それにも関わらず、元経営コンサルタントの私がなぜそこで働き、一体何をしているのか。本コラムでは、そのような観点をご紹介しながら、ポスト・コンサルタントのキャリアパスに関するひとつの参考例として、サッカービジネスの現場の情報も交えながらお伝えできればと思っています。


コンサルファームからサッカー部門へ。転職の経緯


私が所属する以前、東京ヴェルディ強化部には主に下記3つの領域について課題がありました。

①部門予算の立案・進捗管理
②業務プロセスの改善・標準化
③外国人選手の日常生活サポート

サッカー部門の主な仕事は、前述の通り「サッカーチームを編成・マネジメントする」ことです。「編成」の観点では、サッカーの専門家による目利きが必須である一方で、その裏側では、各選手・スタッフにいくらの報酬をお支払いできるのかといったお金の管理や、選手代理人との交渉・契約スキームの検討・契約書への落とし込み、部門業務の整備など、ビジネス的な機能も同じように欠かせません

サッカー部門において、サッカーとビジネスはまさに表裏一体の関係です。そして、サッカー選手がゴールキーパー/ディフェンダー/ミッドフィルダー/フォワードなどと各々の得意領域に応じてポジションに分かれているのと同様に、サッカー部門内でも、サッカーの専門家が選手の目利きやチームのパフォーマンス評価を担い、ビジネスの専門家が予算管理や業務整備を行う、といった役割分担をすることで、部門としての全体最適がより強固なものになると個人的には考えています。当時の東京ヴェルディでは、特にビジネス面の課題がネックになっており、強化部内にビジネスの専門家を増強しようという合意形成があったと聞いています。

加えて「マネジメント」の観点、その中でも特にブラジル人を主とする外国人選手の管理について、人手・人材不足を理由に手を回しきれない課題もありました。サッカーという競技は、オフザピッチにおける精神面の乱れが、オンザピッチのパフォーマンスにも影響するもの。当時は、オンザピッチ専任となっていた通訳の方を、主にオフザピッチの観点から支援する立場として、強化部内でもブラジル人をマネジメントできる人材を必要としていたようです。

私の経歴・キャリア志向については、今後本コラムでも詳しくご紹介しますが、サッカークラブ経営に携わることを目指して、大学ではポルトガル語を学び、コンサル時代にはスポーツビジネスのプロジェクトをいくつか経験し、まさに「コンサル×ポルトガル語×サッカー・スポーツ」という掛け算のキャリアを送ってきました。それが東京ヴェルディ強化部の求めていた人材要件に合致し、クラブに迎えられるに至りました。

ちなみに、現在では入社時から役割が少し変わり、ブラジル人のサポートは主担当から離れ、業務設計や組織マネジメントにより深く携わっています。


年俸半額でも転職を決めた理由


スポーツ業界はややもすると「給料が低くやりがい搾取」と揶揄されがち。私も入社当初はコンサル時代から、報酬がおよそ半額になることを受け入れて東京ヴェルディに転職しました。スポーツ業界の薄給は、私も含めスポーツビジネスの主体者全員が知恵を絞って解決に取り組むべき課題だと認識しています。私自身にとっても、業界に飛び込む決意をするにあたり、最大の障壁だったことは事実です。

それでも、金銭面を度外視してでも、東京ヴェルディという歴史あるプロサッカークラブで達成したい2つのミッションがありました。それらにチャレンジできる環境こそが、難しい決断をするにあたっての決め手となりました。

ひとつが、東京ヴェルディが「世界一の総合クラブ」になるための一助となること。これはクラブのビジョンでもありますが、私自身も共感を覚えています。任期中には、将来的なクラブの巨大化にも耐え得る基盤を強化部から構築したいと考えています。東京ヴェルディは、今でこそJ2リーグに甘んじていますが、かつてはJ1リーグ初代王者に輝いた歴史あるクラブ。J1リーグに復帰・定着した暁には、古豪復活のストーリーを描き、首都東京を拠点に様々なステークホルダーの皆様を巻き込みながら、世界に誇れる総合型スポーツクラブになり得るポテンシャルを持っていると信じています。

もうひとつが、サッカー部門の在り方について新しい事例となること。批判を恐れずに申し上げると、日本のサッカー部門(ひいてはスポーツ部門)は、まだまだ伸びしろがあるものと認識しています。日本でもトップクラスの知名度がある東京ヴェルディですら、伸びしろだらけでした。米メジャーリーグでは例えば、スポーツ部門のトップであるゼネラルマネジャー(GM)の地位に、有名大学を卒業し、投資銀行/コンサルティングファーム/法律事務所などで経験を積んだ非プロ出身者が就くことは珍しくありません。欧州のサッカークラブでも、ビジネスの専門家がゼネラルダイレクター、サッカーの専門家がスポーツダイレクターの職に就き、役割分担をしているケースが実在します。日本でも、このような体制を採用するクラブがもっと増えても良いのではないかというのが、私個人の率直な考えです。

東京ヴェルディ強化部の新しい取組みを世の中へ発信することで、他クラブのサッカー部門の皆さんにとっても新たな刺激になれれば光栄ですし、同時に、スポーツ部門におけるビジネス人材へのニーズを顕在化させることで、スポーツ業界に飛び込みたくても躊躇している人材の受け皿を増やしたいという想いも抱いています。本コラムでは今後、特に後者について参考となるような情報や考察を発信していきたいと思っています。

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